【旅行記・楽曲/ライブレポート】2023.8.5「プリキュアシンガーズ Premium LIVE HOUSE Circuit!」Vol.2 <2009-2018 Middle 10 Years 〜大阪公演〜> に行ってきました。〜3年前の忘れ物〜

 

前記事:プリキュアライブサーキット広島公演レポート 【ライブレポート】2023.7.1「プリキュアシンガーズ Premium LIVE HOUSE Circuit!」Vol.1 <2019-2023 Newest 5 Years 〜広島公演〜> に行ってきました。 - さくら書記 

 

前日譚

「一大事」のライブ

「衝撃」のち「大本命」――。

 

2023年4月7日金曜日。年度末・年度始めの最繁忙期で連日残業が続き、疲弊しきったタイミングで「衝撃的」なツイートが流れてきた。

待ち望んだ遠征、地方公演。そして待ち望んだ「全体の曲数が限られているためあまり刺さらない曲まで聴かなくてはならない『単作ライブ』でも、1作品に割ける曲数が少なくなりがちな『全作集合ライブ』でもなく、ほどほどの作品数で区切られた『コンピレーションライブ』」の発表に、大きく心が沸き立った。

私は以前からプリキュアのライブでは終了後恒例となったアンケートにおいて「今後開催してほしい企画は?」といった自由記述欄に毎回「単作でも全作集合でもなく、1作品あたりの曲数が多すぎず少なすぎずとなるよう何作かずつで集めた、ちょうどいい作品数のライブを開催してほしい」との旨を回答し続けていたのだが、今回の3公演はまさにこの要望がそのまま採用された形だ。嬉しく思うと共に、ただの1ファンとして出過ぎたことを述べているとは重々承知しているが、私もこの企画の発案者の1人であると言えることが少し誇らしく思えた。

 

「1番人気」の理由

普段よくつるむ仲間もこの3公演には即座に興味を示し、早々と誰がどの公演に行きたいかの出欠を取り、チケット調整に向けたグループが立ち上がる。直近5年の広島、中10年の大阪、初期5年の東京。多くは「アイカツ!」で知り合った、年代が近い仲間が多く集まる私の周辺での「1番人気」は今回の大阪公演であった。

私は若き日よりCCさくらおジャ魔女ぴちぴちピッチミルモでポン、マシュマロ通信といった女児アニメを愛好していた異常オタクなので、初代の頃から「プリキュア」の存在は認知していたが、プリキュアシリーズをリアルタイムでなんとなく観るようになったのはS☆Sから、そしてプリキュアにドハマりする切欠となったのはその次、メンバーがカラフルになってからであった。

仲間に「オタクの目覚めはいつだったか」を聞くと、大体は中学・高校辺りからと答える。そしてその仲間の多くとは「アイカツ!」で知り合っているのだが、女児アニメを選好するオタクは多かれ少なかれ、女児アニメの「金字塔」の1つとして君臨するプリキュア、少なくともどこかで1作品以上のプリキュアを経ている。

詳しい年代は言わないがこの辺り〜もう少し下くらいが多い私の周りにおいては、直近5年となると「ポスト・アイカツ!」で三次元・2.5次元等アイドルコンテンツに熱が向かったり、結婚などライフイベントを期にディープなオタクからは足を洗ったり、単純に歳を取って大人の感性に切り替わっていたりと最近のプリキュアは観てないという層が多い。他方15年以上前の初期作品となると若すぎてまだ「オタクとしての夜明け前」であり、後付け履修が多かったり、記憶が薄れてたりするため優先順位は下がる。

そう、年代的に「記憶に強く焼き付いているプリキュア」は、凡そ中10年なのだ。

 

本公演では年代としてはフレプリ〜ハグプリまでが対象となっているが、出演者が池田彩・吉田仁美・宮本佳那子・北川理恵・(Guest)工藤真由と、フレプリだけOPEDのシンガーがおらず、どうするのかが気になっていた。

結論から言えば残念なことにフレプリは全く触れられず"実質中9年"であったのだが、開演前における私の期待はそれを含めて多岐に渡り、音楽は突然ダンサブルで洗練された調に、映像は3DCGにとEDが革新されたフレプリ、HEART GOES ONを有しEDは2曲共良質なハートキャッチ、音楽がテーマだけありOPED共に質実剛健でフロアのバイブスが上がる名曲揃いのスイプリ、突き抜けて勢いがある作品でイェイ!イェイ!イェイ!が屈指の楽しさのスマプリ、Wicky.Recordingsが手がけたテクノポップなED2曲は共にプリキュア全シリーズの中でも未だNo.1のエンディングテーマとの評も多いドキプリなど、中10年の作品についてはほぼ全てがまるで今私の眼前で映像が投射されているかの如く、観たい・聴きたい歌やプリキュアたちの活躍・ダンスが脳裏から聴覚野・視覚野・心の琴線をノックし、鮮明に情景を描かせる。

何が何でも大阪だけは行きたいと強い願いを込めて申し込んだローソンチケットは、広島を落として大阪を当選させていた。個人的に支援を頼んでいた5名は、なんと全員どの公演も落選していた。

結果的に私の所属するグループでは大阪公演ばかり当選しており、大阪公演のチケットはほぼ過不足なく希望者に供給できることとなり、安堵すると共に近しい仲間と久々に割と大人数で遠征できることに対する楽しみが大きくなっていた。

 

遠征計画決定

チケット当選が確認できたタイミングで8/3木曜から有休を取得し、8/6日曜の夜に帰京する3泊4日の旅程を計画。勤務態度はそれなりに良いので、なんの不都合もなく2日間の有休が承認される。都合よく翌7日月曜日は休日出勤の補填で代休日とされており、疲れを癒やすための1日も用意されていた。

交通手段は脳死で新幹線か飛行機を考えていたが、EX-IC改悪などやたらと強気価格なJR東海に嫌気が差していること、遠く1ヶ月以上前から旅程が決定していることを勘案し、早割で取れば新幹線よりも割安な飛行機に決めた。

飛行機で行くとなれば、プリキュアファンなら当然思い出されるのが現在放送中・ひろがるスカイ!プリキュアPeach Aviationとのコラボ。Peachの飛行機1機-JA827P-が機体後部にひろプリのラッピングを施された「プリキュアジェット」となっている他、機内販売でコラボ限定グッズを販売していたりする。

成田-関空を結ぶPeachの路線は、東京西部に在住する都民の一般的な選択といえる羽田-伊丹よりも圧倒的に空港が遠くなり、空港までの運賃差・時間を勘案するとLCCが提示する価格ほどの魅力があるとは思えなかったが、「折角プリキュアのライブに行くならプリキュアの飛行機でしょ」「どうせならプリキュアジェットに当たりますように」とイベントのテンションとガチャ感覚で、セールにも後押しされ安直に往復Peachに決定。

往路 MM312 NRT0715→KIX0850

復路 MM319 KIX2040→NRT2210

往復 手数料・空港使用料込 10,750円

これは安い。安いのだが、キャンセル・変更不可という最安の航空券を買った数日後からずっと「やっぱ成田も関空も遠いし、行きの成田朝7時15分発とか結局スカイライナー乗らないと間に合わないじゃん…朝一の羽田-伊丹のJALとか9000円くらいだったし、それで行けばよかった…」などと非常に後悔していたが、後日、遠征最終日に「往復Peachという決断」によって最高の思い出がもたらされることになるとは、その時の私は知る由もなかった。

 

旅行開始〜開演当日

8月3日木曜日

まだ外が真っ暗な時間に起床し、いそいそと成田へ向かう。遠い。ただただ遠い。

LCCらしく座席は未指定だったのだが、成田で自動チェックインすると運良く窓側座席が割り当てられた。夏休み期間ということもあり不便な時間の便にもかかわらず比較的搭乗者は多かったのだが、窓側をアサインしてくれた。おお、幸先が良い。

 

機材は―前日夜からどの航空機が今どこにいるかリアルタイムでトラッキングできるサービス、Flightradar24を普段から眺めていたためわかっていたが―残念ながら何の変哲もない一般機だった。プリキュア機は関空で夜を明かしたらしい。

そもそもPeachで運用されているA320は30機超あり、ラッピング機の機材繰りなども全く公開されていないので、たった1機しかない飛行機を狙って乗るというのは至難の業なのである。

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快晴の成田Aランから上がると、あっという間にもう関空三重県くらいまでは雲がほとんどなく、眼下に街を眺めながらのフライト。

FlightradarでJA827Pが関空にいたのを調べていたため、スポットへのタキシング中にその機影を探すと…最も端のスポットに駐機されていた。

幸いなことに私が乗っている便はその僅か2つ隣のスポットに入り、タラップで降機しターミナルまで野ざらしの空港敷地内を歩く間、障害物は多いながらもどうにか便利ズーム1本だけ付けて持ってきたミラーレス一眼でその機影を収めることができた。初めてそれなりに近くで見たJA827Pである。

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プリキュアジェットと出会えて早朝出発の不機嫌さは解消され、関空から今夜の宿泊地・神戸に向けてダラダラと移動を始める。
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プリティストア大阪本店、アニバース心斎橋を訪問。結局やってることが東京と変わらない。もう大阪市内の観光地らしい場所はあらかた行き尽くしたし…

その後はあれこれ足を伸ばした後、職場の福利厚生の借り上げでグレードの割に破格だった神戸のホテルにチェックイン。シャワーを浴び、地場居酒屋で一杯やって泥のように寝た。

 

8月4日金曜日

ハイグレードシティホテルはベッドが違う。心地良い朝を迎える。

神戸の街は昨日に引き続き晴れ。普段は地場産品を優先して食べたいため素泊まりしか選ばないのだが、ホテルの朝食が付いていたので朝からパン・ご飯・麺・デザートのデリシャスパーティ♡プリキュア属性欲張りプレートで行動への活力をチャージ。実にデリシャスマイルである。無論、健康を考え肉魚卵牛乳で身体を作るタンパク質も注入した。

 

この日は人生初の淡路島へ。何度も高速バスで素通りしたことはあったが、SA含め上陸したことはなかった。トンネルや長大橋梁といった土木オブジェクトが好きなため、明石海峡大橋を渡る、下から眺めるだけで既に満足感がある。

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地魚定食を食べ、地元スーパーに寄り、道の駅に寄り、ぐるっと島内を一周し夜に神戸へ帰る。

舞子から僅か10分。橋続きで離島らしからぬ島ではあるが、商店街や集落は都会や県庁所在地クラスの街の喧騒とはかけ離れた穏やかな時間が流れていた。はたまた、パソナという政商…黒船が来航したこともあってか、Z世代へ向けたかのような若く洒落た新しい店舗も多く見受けられた。地理的条件に依るところも多いにありそうだが、淡路島はしっかり新陳代謝している離島であった。

 

8月5日土曜日 ライブ当日

昨晩と同じベッドで目を覚まし、今日もデリシャス朝食を注入。最高気温36度に張り付いて下がる気配を見せない天気予報に朝からやる気パワーを吸い上げられ、阪神間で特に観光したいところもなかったためチェックアウト期限の11時ギリギリまで粘り、適当に出発。

今日の宿はライブに参加する仲間と泊まる民泊。15時を回ったら入れるようになるので、それだけを目掛けてダラダラと阪神電車で移動した。

宿の前でワラワラと仲間達と合流し、宿に大きい荷物を置いて軽装でTRADへ向かう。今回の公演はオルスタなので、更に"梅田のあの辺"における行きつけのコインロッカーにも立ち寄り、ポケットの中以外手ぶらに。

 

3年前・2020年2月末。今回の会場であるumeda TRADには来たことがある。ここはアイカツオンパレードのライブ、ユニパレ!大阪公演のハコである。
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しかし当時は中に入るどころか、目的だったライブの開催すら叶わなかった。世間では未知のウイルスと横浜港に留まるダイヤモンドプリンセス号の話題で持ちきりで直前に公演中止となってしまったのだが、当時は―まだコロナ対応の最初期だった頃は―私が抑えたLCCの航空券は無償払戻なども全くなく、だが航空券代をドブに捨てるのも癪なので、コロナが何者か判然とする以前の「未知のウイルス」の恐怖に蓋をしつつ、ただのノープラン大阪旅行となった。

この後2週間ほどで「緊急事態宣言」が発令されて街から人が姿を消すこととなるのだが、これはまだギリギリ人流があった頃の思い出。

 

話を今に戻そう。

同じハコでそんな経験をしているだけに、この場所にプリキュアで帰ってこれること、活気を取り戻した会場の雰囲気に少し感動してしまう。

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個人的には「約3年半もの間留め置かれた"忘れ物"を引き取るため」万感の想いでライブ会場に足を踏み入れた。

 

ライブ本編

屋外がとても暑かったため、場内は冷房が効き涼しかった。最初だけ。

公演が進んでいくと過去の屋内ライブを総合しても最も過酷といえる気温・湿度となり、終演後熱中症のようになっているオタクも出た。途中から上手のエアコンは結露で雫を垂らしてるし、空調は熱気を冷ますには全く力が足らなかった。

しかし無理もない。オルスタ、Anthemだらけの歴代セットリスト。これでボルテージが上がらないわけがないであろう。

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開演前アナウンス

本日出演する演者らによる諸注意事項案内。何故かセルフエコー風に言ってたりメチャクチャ遊んでいた。

 

1. We can!! HUGっと!プリキュア

初手はハグプリ。新しい方から古い方に遡る構成は広島の時と同じようだ。イントロを歌い出すとオルスタの会場がいきなり絶叫に包まれる。「死刑執行」が開始された。

示し合わせずとも皆サビの跳びポで跳んでいた辺り、オルスタだと流石にライブ慣れしたオタクばかりだと分かる。宮本佳那子もバチバチにフロアを煽って来る。今夜は安心して身体を預けられそうだ。

 

2. 明日笑顔になぁれ!

お前!お前お前お前!

スーパースターズの映画はあまり面白くなかったのだが(直球)、この主題歌だけは好きで頭に残っている。思えばこの翌年更に酷い内容で音楽もそれほど…というオールスターズ映画が出たので、今となってはまだよかったのかもしれない。私と同名の「サクラ」が出たこの前年のオールスターズは良かったのに…

閑話休題。1音目から突き抜ける「はーなーひらーけー」というイントロ=サビのハイキーなメロディは北川理恵という歌手の力を大いに活かし、タイトルの通り聴いているこちらが笑顔になってしまった。

 

3. レッツ・ラ・クッキン☆ショータイム (TVsize)

キラプリに突入。キラキラ☆プリキュアアラモードという作品は、6人もプリキュアが登場し画面を覆い尽くすほどにカラフルという視覚的情報とは裏腹、プリキュアとしては各人の「個の意識」がとても強く、仲間との紐帯は他作品と比べ明確に、おそらく過去最も薄く感じられる異色の作品なのだが、OPEDは全て明るい曲調でやたらと合いの手・コーレスが多く一体感を持って楽しめるという味付けが妙なところ。

本公演とは関係ないが、キラプリのキャラソンは名曲揃いな上、1キャラ2曲以上は歌っており、前後で2枚+ベストとアルバムも3枚出ているという力の入れようなので、楽曲派諸兄は是非一聴することをお薦めする。私の好きな四字熟語は「苺坂物語」です。

そんなキラプリ前期EDの本曲はさながらPrinceが切り拓いたような、ロックンロール・ディスコ・R&B始め各ジャンルの要素を混ぜ合わせた80年代のアメリカン・ポップミュージックさながらのビッグバンドな雰囲気。ブロードウェイの劇場辺りでバックバンドを従えて歌われていそうなオールドスクールな雰囲気がある。この系統は後期EDのシュビドゥビ☆スイーツタイムにも引き継がれ、名曲揃いの本作を彩る。

本曲は6枚もリリースされたキャラソンシングルに収録された半音下げた各キャラ個別歌唱バージョンや、アルバム収録の声優全員歌唱バージョンもリリースされており、これだけ沢山歌われまくったEDというのも珍しいのではなかろうか。

 

FullのCメロへかけて挟まるコーレスを楽しみにしていたらまさかのShortで面食らうも、本曲は過去に割と披露されている方だったので「次のED」を優先するのだろうと納得感があった。

 

4. シュビドゥビ☆スイーツタイム

前の曲がShortで終わった瞬間「順番的にはここだよな…」と緊張が走る。

直後、宮本佳那子により「みんな、プリキュアの名前言えるかな?」と小MCが入った瞬間に身体を突き抜けた稲妻を、今でも覚えている。

 

大阪公演で内心最大のお目当てがこのシュビドゥビ☆スイーツタイムである。今までのプリキュアシリーズ全曲の中から好きな曲TOP5を決めるとしたら、シュビドゥビ☆スイーツタイムは間違いなく入ってくると言い切ることができる。

「作詞・作曲・編曲:R・O・N」この通り1名の男だけがクレジットされた本曲、私にとってはおよそ20年前から始まり今も抱き続ける高まりの感情を呼び起こさせる。

R・O・Nといえば「新谷良子」だと、私は知っていた。

時は20年前の2003年、新谷良子1枚目のシングルである「ワガママdate show」という曲が深夜、文化放送アニラジで流れていたことがきっかけで、新谷良子もろとも大好きになった。その曲のクレジットが前述した「作詞・作曲・編曲:R・O・N」であった。

その後この黄金コンビはトリックスター、ロストシンフォニー、crossingdays、月とオルゴール、ハリケーンミキサー…と続々名曲を送り出して行くのだが、この2人のタッグの中でも一番好きなのが、現在でもライブのオーラスで披露されることも多い代表曲「CANDY☆POP☆SWEET☆HEART」だ。

この曲に対する詳しい感情は割愛するが、今回のシュビドゥビ☆スイーツタイムという曲をテレビで初めて聴いた時、そしてフルを初めて聴いた時、心の奥底から湧き上がる、とても昔から知っているはずの熱い感動が込み上げてきたことを思い出す。第1感として「この曲、CANDY☆POP☆SWEET☆HEARTだ」と感じたのだ。

具体的に言うと、要素が似ている。Lo-Fiなイントロ、オーソドックスなバンドサウンド、リズム隊主導のグルーヴ感の強い展開、早口・ラップパート、サビの休符の使い方、大サビへの上げ方、いきなり終わるアウトロ、小刻みに毛色が変わるメロディの種類の多さなど、私が大好きなR・O・Nプロデュースそのものの一曲だった。

メロディ良し、サウンド良し、ワードセンス良し、ヴォーカル良し、グルーヴ良し。何一つケチをつけるところがない。歌詞にも出てくるドゥワップ調…から昇華したロックンロール色の強いグルーヴ感がある。キラプリのEDは2曲とも何故かオールドアメリカンな潮流のビッグバンドスタイルなポップスであるのだが、それでいて作中・映画で描かれる異国要素はフランスというちぐはぐさなのも"フリースタイル"で面白い。

 

1番と2番でメロディの構成が変わる上間奏の後にCメロまで用意される欲張りっぷりの本曲、過去のプリキュアソングの中でも屈指のメロディの多さになる上、グルーヴィーで緩急のあるパート、話すようなパート、歌い上げるパート、早口パート、スキャット風で複雑な歌詞など、歌唱する側からしてみれば難易度が高そうに見える。

しかし歌い切れれば間違いなく宮本佳那子最大のキラーチューンになれる一曲だろう。今後より一層の披露を期待したい。20周年ライブでも是非披露していただいて、グルーヴでハチャメチャにしていただきたい。

 

この曲、あまりにも大好きなのに、かつしかシンフォニーヒルズでのキラプリライブではやらなかったし、サンプラザの15周年ライブでもやらなかったし…当時の大きなイベントというとアニサマ2017で披露されているが、コンピレーションライブには当時の推しが出ない限りは行かなかったし、品川ステラボール・オルスタのハグプリライブでもやらず、以降は歌唱機会が減りプリキュアシリーズもろともなかなか宮本佳那子自体が参加せず……

満を持して、今日。令和5年8月5日土曜日。コロナから明けて声出しOK、オールスタンディング。全てがグリーンライト。6年間待ち侘びた瞬間が、遂に訪れた。

 

イントロから"異常な声"を発してしまったのだが、会場も多くは同じであった。贔屓目もあるとは思うが、会場のボルテージが最も高まったのが本曲だったのではなかろうか。プリキュア10年分のオルスタライブに来るような狂った奴等は「良い音楽はキラプリにあり」と知っているのであろう、君たちは本当に素晴らしい。

本公演ではひたすらオタクが縦ノリしながら合いの手・コーレス・ハモリ・クラップを入れ続ける。「ホイップジェラートカスタード マカロンショコラにパルフェ 作って食べて戦って ぐるぐるぐるぐるぐるりんぱ」というハモリパートはもちろん、それどころか歌手単独で歌唱している「シュビドゥビドゥワップシンガロン パラッパラッピンプレゼント フワフワフワリンリンガベル ブンブンアイラブプリティーガール」というスキャットにまで声を重ねてみんな大合唱していた。フロアもこの曲を待ち望んでいたようだ。無論、声出しOKでないとこのグルーヴは味わえない。逆説的に言えばコロナ明けというタイミングもバッチリだ。

突き抜けて楽しいメロから視界が開けるといきなりサビはやや哀愁を含むフックメロディになり聴かせてくる緩急も抜群。それでいてサビにもガンガン合いの手が入る構成で、全体の"バカ楽しい"グルーヴを壊すことがない。

2番ではメロディ構成が変わり、よりグルーヴィーな合いの手を欲しがるパートが入ってくる。どうやって考えたんだよこの構成、天才の所業か?否、R・O・Nか。これは天才の所業だった。

2番サビ明けの間奏で感情がメチャクチャになり「6年間求め続けていたものにようやくありつけた」感動と楽しさで泣き笑いする。「これからのことは明日考えよう」その後挟まるブリッジパート最後の「オッケーキラッとひらめいた」という"スイッチ"を起点に、全員でクラップしてホイップジェラートカスタード〜を叫びながらもう一度頂へと引き上げられる感覚。アイカツ!を失って以後の近年で一番の高まりだったかもしれない。

ホイップジェラートカスタードマカロンショコラにパルフェと連呼するパートが曲中最後となるタイミングで「ラスト行こうか」と明示する掛け声のような歌詞のセンスも抜群。「最後だししっかり楽しんでおけよ」という意味合いの"ダメ押し"を受け、プリキュアを連呼する意味のない歌詞を叫びながら天上へ駆け上がる。

シュビドゥビ☆スイーツタイムは、1分、1秒たりとも、無駄な、中弛みするパートがない。ポップスらしいポップスでありアニソンらしいアニソンにフロアのボルテージは高まるだけ高まると、ラスサビが終わった瞬間に急転直下「キラキラ☆プリキュアアラモード イェイ!イェイ!」という短いフレーズだけでアウトロもなく急に曲が終了する。暴れるだけ暴れ、終わったらすぐ撤収。本曲の演奏時間は4分42秒、プリキュアシリーズの本編主題歌としては長めの5分に迫る演奏時間を少しでも短く収めるためのアイデアかもしれないが、クールダウンする間もなくボルテージそのまま、終曲後フロアから割れんばかりの歓声が上がるのもまた一興。

 

待ち望んでいた「大阪に来た目標」が4曲目で達成され、恥ずかしいことにここからしばらくはあまり記憶がない。

とにかく素晴らしい時間だった。

 

5. 桜MISSION~プリキュアリレーション (Movie Ver.)

クールダウンは許されなかった。ドリームスターズ!挿入歌版のイケボバージョン。

これ、好きなんですよぉ〜…(ニチャァ)

2番がないのでスパッと終わり、確かこの後MCに入った。

 

MC1

宮本佳那子と北川理恵のMCがあったことだけ覚えてるんですがMCの内容は覚えてないです…

 

6. ドリーミング☆プリンセスプリキュア (TVsize)

ごきげんよう…とんでもなく久しぶりに聴いた気がする。

エレガントな3拍子とスタンダードな4拍子を組み合わせた曲で、当時プリキュアシリーズは初歌唱だった北川理恵のボーカルも良く"おっ、いいじゃん!"となかなかに驚いた記憶がある。この数年後キラプリのキャラソンで5拍子+7拍子ととんでもない「YUMESORA∞」という曲が現れるのですが…

 

7. 夢は未来への道 (フローラVer.)

待ち望んでいました。北川理恵完全体とも言うべきこの曲。

Let's go goの後思い思いに推しの名前を叫ぶオタク、私はトゥインクルでしたし、連番者はマーメイドでしたが、ここは王道のフローラバージョン。

特にBメロのミュージカルパート、この狭いライブハウスで間近に体験すると実にすごい。圧倒される。

 

8. Dokkin◇魔法つかいプリキュア! Part2

キュアップ・ラパパと魔法の言葉で人生大混乱。ここで急に古→新に作品の順番が入れ替わったのは何故か、歌唱難易度の高いGoプリ曲を消耗する前に持ってきたかったのだろうか。

硬派な曲が続いたところからいきなり遊べる曲になり、会場もより一層沸き上がる。魔法は超楽しい。

 

9. プリキュア・メモリ

吉田仁美さん登場。

宗教上の理由で人形の国バレリーナを除くハピチャは…という感じだったのですが、この曲は別です。すいませんでした。

プリキュアシリーズ10周年記念作品に相応しい本曲は「重鎮」小杉保夫先生作曲、編曲はこの空の向こう・ラブリンクと同じくWicky.RecordingsからDr.Usuiが担当し、バチバチにディスコ調のエレクトロ・ポップな「ドキプリのテイストそのままな(当時は)最近のプリキュアED」でありながらも、要素を分解していくと曲名の如く過去作オマージュもあり、アニバーサリーな1曲となっていた。

Aメロがほぼ小杉先生のまかせて★スプラッシュ☆スター★じゃないかこれ?みたいなメロディだったり、只野菜摘先生が入れ込んだ歌詞は2番の作品名連呼地帯以外もオマージュだらけだったりと、聴き込んでいくとプリキュアシリーズ10年間の歴史が滲み出てくる。

今回のステージとは全く関係ないが、本曲を吉田仁美の代わりに10年分9人のピンクキュア声優が歌唱した「プリキュア・メモリ NewStage3 Version」における2番の作品名連呼地帯で、キュアメロディ役・小清水亜美ソロの「スイートな〜」というフレーズだけ異常にイケボなので、是非一聴してみてほしい。

 

吉田仁美さんの脳トロボーカルが会場を一閃した瞬間、そこかしこから悲鳴が上がる。歓声でなく、悲鳴。大阪公演は最後までこんな感じだった。どの曲も誰かにとっての大きな1曲なのだろう。

大の大人が「キュアキュア!」と連呼している奥に覗く吉田仁美の姿は、今も変わらずダンスのキレが良く、10年くらい前に足繁く通ったステージの記憶が一気に蘇ってくる。ドキプリがやってた当時はショッピングモールの無銭イベントなんかに有栖川おとめ役でお馴染み・黒沢ともよもいたなぁ、懐かしい。これが私にとっての「プリキュア・メモリ」だ。

「過去の思い出を振り返り、未来もずっと色褪せないものにしよう」という意味合いの10周年記念曲を20周年記念ライブハウスツアーで聴くとは、実に感慨深い。

 

 
10. パーティ ハズカム (TVsize)

本当に申し訳ないのだが、この辺りはブルーとかいうイノセントな男性にアニメ視聴を妨害されておりほとんど記憶がない。みんなでご褒美パンティとかしょうもない替え歌してた記憶しかない。

"あ〜こんなのあったわ あったあった"と思いながら吉田仁美のキレキレダンスに見惚れていたら、Shortだったのかサクッと終わってしまった。

 

MC

北川理恵と吉田仁美。「熱気が凄い、いや、湿気が凄い!なんか曇ってるもん!」という会話が出たほどもう会場内はメチャクチャだった。

途中から「紫のドレス」に着替えた宮本佳那子も合流。「今日ダビィがいないから変身できないかも…」みたいな×茶番 ○煽りの後にキュアソード変身口上。わかってても燃えますわなそりゃ。紅茶が好きなので今でもエースティー商品化して欲しいですもん。できれば無糖で。

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11. 〜SONGBIRD

令和5年ですよ。今。まこぴーのあのヒット曲を生で聴けるとは…

ラーラーラーラーというハモリポイント、オーイングできるBメロ、ジングルから多幸感あるメロディ、終始ディスコビートでダンサブルなこの曲は「近現代の正統派アイドルらしい代表曲」を目標にディレクションされたはずだ。放送当時はまこぴーインカムなる商品が発売されていた気がするが、当然大人の頭には入らないため買っていない。

アウトロで「いくよ!」と煽られて「1,2,3,4,fly!」するの、待ち望んでいたもの。トップアイドルのステージは最高です。ありがとう。

 

12. こころをこめて

まこぴーソロアルバム「〜SONGBIRD〜」のラストトラックがこの曲。CDの発売はドキプリ放送中の比較的早い時期だったため曲自体は解禁されていたのだが、作品も終盤・40話の挿入歌として本曲をレジーナに向け歌うシーンが抜群に良い。

開演前から同行者へとしきりに「今日はこころをこめて」と絶叫していたほど個人的に思い入れがある上、それなりに有名な曲なので密かに待ち望んでいたのだが、2曲歌ってくれることになればほぼ決まりだろう。欲を言えば「dance at dawn」「勇気の花」なども聴きたい。ドキプリライブやってよ。今からでも。ついでに歌謡曲とローテクテクノの組み合わせという衝撃的なキュアロゼッタのキャラソン「CLOVER〜オトメの祈り〜」も…と思ったら去年やってた渕上舞単独ライブツアーで歌ってたらしい。ブチアゲダンスさんわかってるじゃないですか。ありがとうございます。

 

本公演では〜SONGBIRD〜の後に宮本佳那子による小MCが挟まり、確か「ドキプリチームとは未だに行き来がある」という話を聞いた後に「次の曲は私の大事な曲です。」との前置きとタイトルコールがあり、ここで確定演出だなと先回りしてエモくなってしまった。勿論、直後にコールされたタイトルは「こころをこめて」である。

2014年に入り宮本佳那子が体調不良で休業したことを記憶している読者も多いだろう。プリキュアファンでなくとも、アイカツ!ファンも知っているはず、音城ノエル役である。宮本佳那子から加隈亜衣に代わっているのだが、9年の時を経てなんと加隈亜衣プリキュアになり、遂には10/21のひろプリライブで新旧音城ノエルが揃ってしまったことは記憶に新しい。

 

話を戻すと、休業明けに始めた宮本佳那子のブログの名前が「宮本佳那子のこころをこめて」であった。これだけでも本曲が当人にとって大事にされていることがわかる。

「完璧主義な性格から心と体のバランスが取れなくなっていた」と讀賣の英字新聞で当時の休業の理由が語られている。(https://archive.md/23q2x)

事務所に所属しているとはいえ、己の研鑽と能力で仕事を獲得していかなければならないというこの仕事特有のプレッシャーを慮るに軽率な言葉は記せないが、往時、彼女自身は現状に満足せず、あるいは危機感を抱き、上を目指しもがいていたのかもしれない。

そんな往時の彼女のよすがとなるものが、自らが歌った本曲だったのであろう。歌詞を要約すると「不器用な自分を肯定する」「多忙の中に忘れられた真に大事なものを見つめ直す」「大事なものを心に宿しながら、今日よりきっと良い明日のために歌う」という辺りが要旨だ。歌う理由、原点回帰と、未来へ踏み出す決意。この曲は、歌う人が歌い続けるための道を示す、闇夜でも煌々と輝く北極星だ。

 

私ーただの外野のいちファンーが、歩みを止めない現在の彼女ー宮本佳那子ーにこんなことを語っても訝しむだけだろうが、彼女の出演した作品、往時は「こころをこめて」「dance at dawn」や、近年は「シュビドゥビ☆スイーツタイム」など彼女の参加した楽曲に多大なる力をもらっている人間がここにもいることを伝えたい。

私にも過去2回、精神的に参って何もできなかった時期があった。その2回とも快復期にはプリキュアの音楽ばかり流していた気がする。普段は一貫して4つ打ちの、一般的には激しめなダンスミュージックが好きなのに、その時は全然聴く気にもならず。何にもする気力はないのだが無音なのも嫌だし、ワイドショーで聴きたくない情報が入ってくるのも嫌なのでTVもつけず、有害性のないプリキュアの音楽をただひたすらBGMにしていた。心が沈んでいただけに、上がる曲が流れても高揚するわけでもないが、更に深く沈むこともない。近すぎず遠すぎず、私にとっていい距離感だったのだ。

その頃特によく聴いていたのがこの「こころをこめて」だった。同じくドキプリから「たからもの」とひたすら2曲ループしていた時期がある。何故こればかり聴いていたのかといえば、1回目のダウンの時はただ当時好きな曲の中では激しくなく、聴いていて嫌にならず心に響く内容だったから、2回目の時は「あの時も聴いていた」という経験に加え、彼女の休業理由が精神的なものと知った後のタイミングだったため、勝手に「同じような境遇にあったのかな」と想いを重ねて流していた。

当時、完璧主義な彼女がとんでもなく頑張ってくれたからこそ、頑張って様々な仕事を掴んで離さなかったからこそ、私の元にも彼女の声が・歌が届いたのかもしれないだけに、軽率に「つらかったら休んでくださいね」とは述べられない。述べられないのだが、ならば、ただのエゴで言わせてもらいたい。「あなたを失うと私が困るから、あなたが失われないように、あなたにとって今一番大事なことをやって。」と。

夏海まなつが発した「今一番大事なことをやる」という言葉が大好きだ。当初は表層的にしかその言葉を理解できなかったが、時を経てこの行動原理こそが人生の真理であると気付く。

選択と決定の積み重ねである人生、各人が無意識のうちに各人にとっての「今一番大事なこと」を選択し、実行してきた結果が現在なのだろう。時には進むだけでなく立ち止まる、出来るのであれば戻ることだって「今一番大事なこと」の選択肢の一つだ。ただ、なかなかそれに気付かない。或いは気付いてもその選択をする勇気が持てない。築き上げた立場を危うくしかねない後ろ向きな判断は、自己肯定感・自己効力感も伴わないと下すことができない。難しいものだ。だが、再起不能になったら、全てが終わりだろう。そうならずに本当によかった。

 

以上、この曲は個人的に思い入れが深すぎて、直視することに不安があることも事実だ。ただ、もう時が癒してくれた。今は多分、それなりに幸せだ。ドキプリで明示されたような、直接的で大きな愛の喜びとは長らく触れ合うことができていないが、人に恵まれて楽しく暮らしている。

本公演では過去の苦しかった記憶や邪念は牙を剥くこともなく、現在眼前で紡がれる歌声を、この演者もきっと色々あったのだろうと思案しながら、静かに涙を流し受け取るだけであった。自分自身を愛し、自分自身を認めるという気持ちをようやく知れた上で聴く「こころをこめて」は、「明日はきっと良いものになるんだろうな」と私を思わせるに充分な時間であった。

 

歌い続けてくださり、ありがとうございます。

 

13. この空の向こう

ドキドキ!プリキュア前期EDにして、到達点の一つ。

ドキドキ!プリキュアは最高である。最高である理由の一つに、利根川貴之×Dr.UsuiというWicky.Recordingsメンバーによる素晴らしいエンディングテーマが2曲も存在していることが挙げられるのは、言うまでもなく皆様お分かりだろう。唐突に良質なシンセポップがもたらされ、ハードコアテクノを初めとした打ち込み系音楽が大好きな私は当時歓喜した。

この空の向こうは…個人的に全てのプリキュアの音楽に序列を付けるとしたら、TOP5には入る。きっと。シュビドゥビ☆スイーツタイムとこの空の向こうで2席は決まっている。プリキュアの音楽は基本的にエンディングテーマを好きになりがちなのだが、それは私がダンスミュージックが好きだから。3DCG化以後も以前もプリキュアのEDといえばダンスだったので、踊らせる音楽がつくことで好きになるのだろう。

 

本曲を初めて耳に・目にした時、衝撃的だった。

EDCGの舞台は終始夜。そして観客の入った壮大なアリーナ。打ち上がる花火。そうか、ここはまこぴーの仕事場所か。謎の隔離空間、教室、教会、自然といった今までのCGの舞台からいきなりスケールアップし、とんでもないスケールのスタジアム様の場所で、観客を従えてプリキュアたちが踊っていた。背景を暗くすると主像たるプリキュアが映える。半分くらい紺色で引き締まった全体像の中に浮かび上がる主役たちの図は、否が応でも観てしまう。進化した3DCGの口元はリップシンクし、プリキュアがこの歌を歌っている。これはドキドキ!プリキュアフェスだ。

 

今作のダンスはMIKIKOが担当。印象的なフリが多く、カメラワークの力も借りてか踊りは面白く、覚えやすい。満面の笑みで両手を交互に出して引いてするキュアロゼッタ、手を上に伸ばしてキラキラ、カウボーイの投げ縄みたいな上空腕回転、指差ししつつ音ハメで腕を横に振りながら下ろしていく動作、VTuberや"インターネットやめろ"なんかですっかり有名になってしまったとある古豪オタクのTwitterアイコンが思い出されるサビの指振りキュアソードなど、自然と身体が動く。今でも踊れてしまった。

利根川貴之による歌詞は抜群の緩急がある。間奏で連呼される「プププ プリキュア」というフレーズは、これだけで「ドキドキ!プリキュア」と通じるほどのパワーを得たキラーワード。Bメロの8分で早口になる部分「何万光年先は遠い未来じゃない もちろん時間の単位じゃないのも承知」というセルフツッコミのようなパートのワードセンス。卓越。神域に達している。「もちろん時間の単位じゃないのも承知」なんて歌詞、思いつくか?それもプリキュアで。謎のグルーヴ感と可愛さ、いい違和感のフックを兼ね備えた過去最強の歌詞だ。その直後「キラメく望みは 光だって越える」と、"光"が表すものが時間とも距離とも限定されない「望み」が比較対象として上がってくることで落とし前をつけている解決も見事。また、ここでいきなり「望み」が出てくることでプリキュアらしくなる。

また、このパートは2番では「一緒にわけあえることとっても素敵じゃない 守りたい君がいること本当に大事」と変化しているが、「じゃない」の同音異義語としての使い方、語尾の韻の踏み方が非常に美しい。「じゃない」は同じ読みでも1番では否定系、2番では○○ですよね?という同意を求めるニュアンスの疑問系だ。「大事」「承知」は最後の言葉が「i」で終わり、当然同じ読みの「じゃない」同様曲中一貫してビートに一体感が出て早口パートのグルーヴを損ねない。

利根川貴之先生、なんて素晴らしい歌詞をお書きになられたのでしょう。

 

このセンス良く彩られた「夢」を描く歌詞たちは、多幸感に満ちるもただ明るすぎない、神秘的なロマンティストともいうべき珠玉のメロディに乗せられ、説得力を増して心を突き刺してくる。Dr.Usuiによるメロディは比較的シンプルで、メロ・サビの構成内で1〜2小節ごとに似たような主旋律がミニマルチックに繰り返される。シンプルだからこそメロディそのものが良くないと響かないのだが、心配御無用。メロディ単体としてもキャッチーだし、エピックトランス調の恍惚感溢れるシンセベースに乗るとエモーショナルで仕方ない。エレクトロでEpicだと全体の雰囲気が重くなりがちなのだが、ドラムスは休符を交えつつ16分で軽快に刻まれるハイハットが音像の上部で踊る16ビートとなっていて、16分の支えが効いていることによってダンスミュージックとして重くなりすぎない上、プリキュアらしいポップス感がある。

結構近いところで聴こえるシンセベース…ともオブリガートともなんとなく違う?アヒルの鳴き声みたいなミニマルシンセ、2拍で3音入る3/4拍子的な可愛げな音のミニマルシンセが曲中ひたすら鳴り続けているが、この修飾音は曲を華やげるだけでなく良い違和感を与えフックにもなっている。

 

とまあ散々好きな理由を羅列してきたのだが、本公演ではもうイントロのジングルみたいな音で全てを"理解"して全知全能の神になってしまった。中10年は特に好きな主題歌が多すぎて大体瞬間湯沸かし器になってしまう。

会場、地鳴りのような声で「プププ プリキュア」のハモリ、相変わらずキレている吉田仁美のダンスにつられ、私もまだ振りをしっかり覚えていたため自然と踊り出す。

この曲は終始トランスのような恍惚感があり、ただただ楽しく、夢を見ているかのような時間が飛ぶように過ぎ、よく覚えてないうちに終わっていた。合法ドラッグこと「この空の向こう」でトリップしてたのかもしれない。

もうこれだけでも十分なのに、後ろにはまだスマプリもスイプリもハートキャッチも控えている。満足という他ないだろう。

 

14. ラブリンク

本公演でWicky3部作の最後となったのがドキプリ後期EDのラブリンク。神秘的なDフラットメジャーで未来の不確定性のような雰囲気があったこの空の向こうから、ラブリンクでは王道の情熱的・自信家的なAメジャーへとKeyが変化し、サビの進行もド王道といった感じで、作品が後期へと進むにつれ仲間との結束を深め成長したドキドキ!プリキュアたちの頼もしい凱歌のように感じられる。

テイストは変わらずシンセポップ。メロディの雰囲気が軽くなったからかドラムスはどっしりとした4つ打ちになり、仁王立ちして自信と信頼が漲る相田マナ生徒会長のようなイメージだ。音作りの傾向は前作のまま、単純により明るくした感じだ。

個人的には、ドキプリEDはこちらも好きなのだが、どこか不安定さを含み緊張と緩和があり恍惚感がとめどなく押し寄せるこの空の向こうの記憶の方が強い。ただ、本曲ももちろん好きだ。明るく楽しく正統派になった感じ。

 

会場全員で「L・O・V・E」ポーズして「プリキュア〜〜〜〜!!」って叫んだ。あの時、完全にumeda TRADだけ平成だった。

バーカンでグルト売ってたりしません?せんか。(老害)

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ライブサーキットが始まる前に行われた「プリキュア楽曲総選挙」なる投票では、この空の向こう・ラブリンクが「ライブで聴きたい曲」第3位・7位にランクインした。多くはOPがランクインする中、ドキプリはED2曲が共にTOP10入りという快挙で、エレクトロ・シンセポップ路線が間違いでなかったと追認される結果となったのは、電子音楽ファンとしてとても喜ばしい。いい曲なんですよ本当に。

 

 

15. Let's go! スマイルプリキュア!

本公演を野球で例えるならひたすら「DH大谷翔平」ばかり並ぶ恐怖の打線と対戦する感じ。本当に力があり、強く、大好きな曲しか来ない。

毎週テンションが妙に高く勢いがあり脳死で楽しかったスマプリ。スマプリの流行をきっかけにプリキュアを知った諸兄も多くいることであろう。東日本大地震の翌年2012年から放送開始。多大なる犠牲者を出した上、リーマンショック後の経済再生の腰をも折る物心両面で衝撃的な災害を受け、日本を明るく元気にする使命を帯びていたのであろうか。

最近だとコロナ禍2年目に出たトロプリがひたすらおバカ路線で、前作ヒープリで現実世界とのリンクもあり疲れ果てたであろう多くのプリキュア評論家を気楽な気分にさせたのは記憶に新しい。ただ、私はあの仄暗く重いヒープリが過去全作品の中でもトップクラスに大好きなのだが……

 

会場は池田彩さん登場。大声量は変わらずハリ感も当時そのまま!

キャラ名連呼パート、どうしてもブチ上がるもの。「ハッピー!サニー!ピース!マーチ!ビューティ!」を昔よくカラオケなんかで好きなキャラだけ連呼してたよなぁと思い出す。私の場合だと「ピース!ピース!ピース!ピース!ピース!」となる。昔通っていたスターライト学園大学W稲田キャンパス時代仲の良かったサークルの後輩は「ビューティ!ビューティ!ビューティ!ビューティ!ビューティ!」だ。

ギターのオブリガートとドラムスは一貫して激しくBPMは早く、過去作OPの中でも屈指の疾走感。現在放送中のひろがるスカイ!プリキュア〜Hero Girls〜の登場でOP疾走感個人的トップの座は陥落するも、未だに次点は本曲だ。

会場のボルテージに身を預け、無心でコーラスや合いの手を叫んでいた。スマプリでアガらないわけがないだろう。

 

16.イェイ!イェイ!イェイ!

はいこれも大好きなんです。許してくださいそろそろ。1番DH大谷翔平から勝負が始まり、今9番DH大谷翔平の打席が終わって2巡目に入った感じです。抑えられるわけないだろこんな打線。こんなボスラッシュ。

プリキュアは基本一途に「OPよりEDの方が好きになりがち」なので、スマプリでもこっちの方が好き。

プリキュア楽曲総選挙「元気が出る曲」1位。本当に納得です。底抜けに明るく、挫けず、元気な本曲の内容を、ファンはよく理解している。それでいて普通にいいメロディ、いいリズムのいい曲なんですよね。

 

 

この曲はザックリ言うと「気が置けない仲間といれば自然と明るく笑顔になる」ということを歌っているのだと思うが、私がこの曲を聴きまくっていた時期がちょうどまさに毎日素晴らしい仲間に囲まれ充実したものであったので、この曲を聴くと個人的な実感をもって私の楽しかった日々やスマプリのワチャワチャした雰囲気が思い出される。本曲には当時をリアルタイムで経験した人間しか知らないであろうあの頃特有のスマプリの"勢い"と、大いに個人的な思い出補正が詰まっている。

 

イントロのギターリフが聴こえた途端に瞬間湯沸かし器みたいになって奇声を発していた。身体はダンスを覚えていた。カメラを覗き込んだ後駆け出したキュアピースが盛大に転んでいた。冷房が全く追い付かずに滝のような汗を流すのも厭わず、持参したタオルでそれを拭う手間も惜しみ全身で本曲を感じ、躍動する。イェイ!イェイ!イェイ!は私にとっての「青春の曲」の1つなのだ。

フロアに気をやると、結構当時のダンスを踊れている人が多かった気がする。特徴的な振りとしてはイントロ/サビ終わりの「いつだって ワクワク」の「ワクワク」で両手を上に4回挙げるお祭りみたいなダンスがあるのだが振りコピ率が高く、もう踊ってたやつら全員即ダチ決定肩パンウェイよ。

 

17. 満開*スマイル! (TVsize)

スマプリ後期ED。(星空)育代!スマイル!プリキュア!私は未亡人の黄瀬千春がですねぇ!(ニチャァ…)

とまぁママキュアの話はここまでとして、本曲も前期EDイェイ!イェイ!イェイ!ほぼ同様の路線で来た。強いて言うなら前期EDからプリキュアシンガーに加わった吉田仁美というボーカルをフル活用すべく、特徴的にハイキーを使う、細かい変化が多いなど難しいメロディになっている。

個人的にはテクニカルになったメロディが…というよりも、シンプルにメロディのクオリティと歌詞の力、グルーヴ感が前期EDと比べて落ちてしまったため、あまり聴き込んでおらず思い入れがない。ヒープリ・ハピチャ同様、前期EDが強すぎたのだ。

それでも曲が始まれば楽しい。単純に楽しい曲が多い作品はライブでも力があり、会場は笑顔と興奮で燃えに燃えていた。

 

MC

池田彩さん挨拶 大阪のミュージカルショーで初めてプリキュアの歌を歌った話

そろそろゲスト(工藤真由)が来る話

 

18. ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪

工藤真由さん登場。アンリミ版より無印のこっち!わかってるじゃない!

スイートプリキュア♪は音楽がテーマなので、当然珠玉の楽曲が豊富にあり楽曲的評価は高い。初期OPの本曲は「音楽の楽しさ」が詰まっており、ヴォーカル・コーラス・楽器とどこを切り取ってもわかりやすく、たまに変化があり、初心者プレイヤーとしてはいい練習になる。特にギターは弾きやすく楽しいコードなので、私も練習に使った経験がある。少し抜いてパワーコードを押さえておけばそれっぽく聴こえるのだ。簡単で楽しい。

イントロ1音目からいきなり緊張感がある。リバースシンバルと憂いを帯びた吐息のような6弦ルートB♭m7のギターが鳴り、La〜というコーラスが重なってくると休符があって歌い出し。かなり硬派な入りで、業界用語らしく言うといきなり「緊張と緩和」を交えながら曲の世界に引き込んでくる。

わかりやすいグルーヴ感のドラムス、Bメロ入りの4小節の転調、ラスサビの輪唱のようなハモリなど、小難しくはないが楽しい音楽的仕掛けが散りばめられ、まさに"音楽のプリキュア"らしい良いOPだと改めて唸らされる。

 

本公演ではこの曲がかかると大体全員がリバースシンバルが止みギターで一撃が入ってきた瞬間に阿鼻叫喚しており、イントロの"仕掛け"の強さを実感する。その後皆「スイースイープリキューアー」と叫び出したりパンパンパパパンとクラップを入れたり、シームレスに緊張緩和パートの楽しさに乗っていき、会場が1つにさせられる。この曲には作品のイメージを抜きにして音楽的内容だけでも会場を掌握できる強さがあるのではないか。くどまゆの力強いヴォーカルにも引っ張られ、楽しい時間だった。

 

19. ワンダフル↑パワフル↑ミュージック!! (TVsize)

Tomorrow Songで灯ったプリキュアゴスペルの息吹を継ぐスイプリ前期ED。ブラスがガンガン鳴り、ジャジーさが増して非常に大人っぽい雰囲気に仕上がっており、そこにプリキュアの音楽らしくポップス感を交えた感性は「天使にラブソングを2」辺りのゴスペルのイメージ。

周りの悪〜い楽曲派オタクの間で開演前「Tomorrow Songとワンパワで絶対にゴスペルコーラスしたい」(オブラートに包んだ表現)と俄かに盛り上がりを見せていたため当然私も"聖歌隊"になったのだが、意外や意外私たち以外の善良そうな皆様もゴスペルパートをガンガンハモっている。

フル間奏のサックスで気持ち良くなりたかったのだが悲しみのShortで終わってしまった。20周年ライブに期待しておこう。

 

20. #キボウレインボウ#

後期ED。音数がえらく少なくドラムスや裏ギターによるリズム主導でボーカルがドン!と乗っかる一曲で、当時はえらいシンプルな曲にしてきたなぁと驚いた記憶がある。

一聴すると穏やかだが、相対的にkickが強いためライブ音響でかかるとグルーヴと程良い攻撃性がある。シンプル故にメロディが良くないと音楽が台無しなのだが、本曲はフックもあり緩急がついたいいメロディなので心配御無用。

内心ややゆったりと、しかし跳ねるように楽しんだ。

 

21. Alright! ハートキャッチプリキュア!

合いの手が楽しい曲。何故かわからないが個人的にこの曲は「非常にスタンダードなプリキュアのOP」というイメージがある。楽しげながらも上品な雰囲気、やり過ぎない雰囲気がそう思わせるのかもしれない。

そんなイメージと、個人的に私はハートキャッチプリキュア!プリキュア沼に完全に引き摺り込まれたので、家に帰ってきたような安心感を抱きつつステージを眺めていた。

 

22. ハートキャッチ☆パラダイス!

工藤真由さん再登場。ヴォーカルはしっとりと落ち着いた感じ。根強いファンが多い前期ED。ギター・ベース・ドラムを主体としたスタンダードな3ピースサウンドにキャッチーな歌詞とメロディが乗る、王道のポップスだ。可愛い・楽しい・踊れると言うことがない。難しいことがなく番人が聴いて楽しい一曲で、ハートキャッチプリキュア!という作品の出来の良さも助けプリキュアファンの中でこの曲はちょっと…という者はいないだろう。

本公演ではあの特徴的なイントロが流れた瞬間フロアが多幸感に包まれていた。私も制服で腕をブンブン振る来海えりかのCGを思い出し、自然と体が踊っていた。

フルバージョンはラスサビからアウトロに入る前に程良い哀愁があり、お別れのテーマ、エンディングテーマらしい後引く感じを宿す。この一工夫がまた聴かせたい、終わらないで欲しいと思わせる。本公演でも「中10年」からするとそろそろ終盤戦であろうことは分かっていたため、えもいわれぬ余韻に浸っていた。本当にいい曲だなぁ。

 

23. Tomorrow Song ~あしたのうた~ (TVsize)

後期EDは衝撃のゴスペル。ワンパワ同様、曲の奥で「フッフッフゥ!」とハモったりハイキーでコーラスする聖歌隊になってしまった。フロアも変わらず聖歌隊だらけだった。

「ハモって!」が「ふぁぼって!」に聞こえるというだけで、極めて限定的なTwitterオタクたちの間で替え歌をしまくっていたのが懐かしい。X?いいね?なんですかそれ。Twitter、ふぁぼ。それしか知らないんですけど…

好きな曲が多すぎるのでゴスペル2曲目もShortかい!とちょっと残念でしたが、まぁ良いだろう。私たちには20周年ライブがある。

 

MC

工藤真由、ゲスト出演の話・プリキュア楽器総選挙の全てのTOP10に工藤真由が歌った曲が入ってたこと 「"ライブで聴きたい曲"1位の曲、歌おうかな〜?」

 

24. HEART GOES ON

先のMC通りプリキュア楽曲総選挙「ライブで聴きたい曲」1位。わかる。古豪ならみんなHEART GOES ONが好きでしょう。神回と名高いファッションショー回・最終決戦の挿入歌で、キーボードとギターの、工藤真由・池田彩という歌姫2人の競演による90年代風な熱いJ-ROCKだ。そりゃプリキュアを愛好するオタク、即ち9割方戦隊モノも好きなオタクはこういうの好きだよね。かくいう私はレンジャーやライダー的な戦隊モノは苦手でほぼ見たことがなく、女児アニメ純粋培養なのだがこの曲は好きである。

本曲を知らない諸兄にこの曲のイメージを伝えるなら、爆風スランプのRunnerみたいな感じだ。24時間マラソンが佳境のタイミングで必ず流れるアレ。ドラムやボーカルこそ毛色が違うが、KeyとGt.が競演し、メロディがエモーショナルで、最終決戦向きの勇気が出る曲。

本曲は工藤真由のゲスト出演が決定した瞬間実質確定枠で来ることが決まっていたので披露されることに驚きはなかったが、単純にバイブスが上がる曲なのでMCの辺りから覚悟を決めていたが、イントロが流れ始めた瞬間やっぱり"瞬間湯沸かし器"になってしまった。すみません、私の負けです。興奮に勝てた覚えがない。

 

この曲を生歌で聴くのは2017年2月以来およそ6年半ぶり。東京都立川市立川駅ペデストリアンデッキ直結の商業ビル、アレアレアでの無銭ミニライブ以来だ。結婚を機に2017年4月での芸能活動引退を表明していた工藤真由、池田彩とのツーマンイベントはこのミニライブが最後とされており、新宿から中央特快に揺られ駆けつけたことをよく覚えている。

その後は2019年1月のプリキュア15周年ライブで1日復帰、また同年9月には芸能活動を再開しておりちょくちょくステージを目にしてはいたのだが、2人揃わなければならない本曲はポッカリと今日の今日までご無沙汰となってしまった。

 

ハイキーの激しい曲がよくマッチする工藤真由と、抜群の安定感の池田彩のデュエットにグイグイ引っ張られる。2人共この曲のことをよく分かっており、コーレスでガンガン会場を煽ってくる。巷で人気なのも頷ける名曲に思い出補正・遠征のテンション・オルスタといった要素が加われば、メチャクチャにならないわけがない。

汗とも涙ともつかない汁を流しながら幸せな約4分半を過ごし、立川からの6年半、いや、ハートキャッチプリキュア!放送終了からの約12年半の精算を大阪梅田にて完了した。

 

25. プリキュア〜永遠のともだち〜

5人全員歌唱での永遠のともだち。完全に意表を突かれ、イントロの瞬間最大風速はこの曲が一番だったかもしれない。冒頭「これが最後の曲だよ〜」みたいなMCがあった気がするが、フレッシュプリキュア!の曲はカバー披露などもなかったため20周年ライブへ持ち越しとなった。

キュアメタル時代を築いた高梨サウンド、クソ長間奏の高梨ギターでしか得られない幸せがあることを、私は知っている。

あのクソ長間奏タイムを使い、アンコール前最後の曲ということで演者から一言ずつ挨拶があった。後ろでギャンギャンドコドコ鳴っているのも味が良い。

オールスターズモノ主題歌らしく会場も大団円という感じでラストハモリを合唱するなど一体となり、中10年の軌跡は幕を閉じた。最後はオールスターズということでフレプリも居ましたね!そうでしょう!

 

再登壇・ラストMC

永遠のともだち終曲後、おそらく広島公演と同じオタクがまた「アンッコール!イグゾ〜〜〜!プーリッキュア!」とアンコールを煽る。程なくして5人再登壇。

池袋公演の告知、CD告知等。5人のMC。特に印象に残っているのは後ろ2人。

池田彩「私が歌っているのは10年以上前の曲だけど、何年経っても歌い続けたい、皆様と楽しみたいと思います。」

工藤真由「(中野での)15周年ライブぶりのプリキュアのライブでした。5年経ってまたこうやって戻ってこれて、歌手として完全復活しました!私の歌に沢山投票してくださったお陰です。私と出会って下さって本当にありがとうございます。」

 

EN 26. シェアして!プリキュア

広島公演に続きアンコールは全員でシェアプリ。広島公演の記事でも散々書きましたがこの曲だぁ〜い好きなんですよぉ…

2020年・ヒープリの時代に出た"比較的新曲"であり中10年の曲ではないため、広島公演と比べ本曲を知らなさそうな人が少し増えた気がする。この反応の微妙な差でライブの「焦点年代の違い」を感じる。

演者が壇上を縦横無尽に駆け回りながら歌っていた広島公演よりもやや落ち着いたテンションでの歌唱。とはいえ、ラストソングなので勿論明るく闊達に、会場も"1曲前"と変わらずたまに大合唱・大団円で、心理的にも物理的にもアツい本公演が終幕した。客席前方上手側にあるエアコンは冷房が追いつかずライブ中盤くらいから、少なくともスマプリくらいから最後までずっと雫を垂らしていた。

 

終曲後・終演後

壇上からありがとう連呼で挨拶の後ハケハケ後に5人の場内アナウンスで終了。

終演後冷静になるとフロアはとんでもなく高温多湿の空間になっており、持ってきたタオルは汗で拭き掃除でもするのかという濡れ雑巾状態になっていた。おそらくこうなるだろうと予想し、オルスタなのでロッカーに預けた荷物や財布以外最小限の持ち込んだ携行品、特にスマホやカード・現金などは防水性のある所謂ジップロックのようなチャック付きの小袋に入れてポケットに入れておいたのだが、正解。裸でポケットに入れていたら汗で水没していたと思う。

過去あらゆるライブに行き尽くした歴戦のオタクも熱中症気味で体調不良を訴えるほどの空間で、物理的な暑さと公演の強度が肉体の限界を突破させる。水、多めに用意しておいて本当によかった…

会場外でクールダウンし、近所のロッカーから荷物を取り出し、汗だくのTシャツから着替え、大阪メトロで仲間と泊まる民泊に帰った。

 

後日譚

8月6日日曜日 旅行最終日

興奮冷めやらぬ中仲間と民泊で宅飲みに興じ、気付けば朝4時になっていた。5時間半寝て慌てて支度しチェックアウト。今回の遠征は現地集合・現地解散だったので同じTRADに集ったみんなとはここでお別れ。

新快速で京都を跨ぎ一路滋賀・大津へ。京阪京津線併用軌道や三井寺などを見学、帰りは京津線京都市にも立ち寄るなど観光客らしい1日を過ごした。移動が楽しい人種なので、今回の旅行で兵庫の端から滋賀まで駆け巡っているが、移動時間は全く苦にならない。地理・交通好きはつくづく得な嗜好だ。

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夜になり、本当なら京都から新幹線夢原のぞみ号で東京へ帰れば速いのだろうが、ひろプリコラボに惹かれ予約したLCCPeachが待っている。京都駅からでなく和歌山寄りの関空から出発、品川・東京駅からでなく成田空港から帰るので所用時間としては全く旨味がないのだが、予約してしまったものは仕方ない。

Peachのひろプリジェット・JA827Pが来ないかflightradarを追いかけると、丁度新潟から関空に降りて来たことを知る。関空のホームページでは到着便がどのゲートに駐機したのか、出発便はどのゲートから搭乗予定かがわかるのだが、関空のホームページを信じれば、新潟からのJA827Pが入った95番ゲートは時系列的に私が搭乗予定の成田便まで出て行く気配がない。勿論、整備などで回送されて別の機材が充当されることも無きにしも非ずなので決まったわけではないが、帰りの飛行機がプリキュアジェットになるかもしれないという大きな期待が生まれてきた。

 

ひろがるスカイ!プリキュアジェット JA827Pに搭乗

居ても立っても居られず無駄に早く関空に向かいオンラインチェックインを済ませると、帰りも幸運なことに機体後方ではあるが窓側。往復共座席指定せず窓側席を得ることができた。

LCCPeach用で無骨な関空の第二ターミナルは、展望デッキもなければ建物の中から飛行機を見ることもできない。40分遅れで始まった搭乗手続きに一番乗りし、ゲートを抜け無骨なターミナルから屋外に出ると、運命の瞬間。

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そこには当時運航中だった「34機中1機」の、待ち侘びた機材が待っていた。JA827P・ひろがるスカイ!プリキュアジェットが見えた。瞬間、人目も憚らず、吠える。プリキュアライブのために予約した飛行機がプリキュアジェットという運命の巡り合わせ、自身の豪運とPeachの機材運用に心から感謝した。

ボーディングブリッジでなく地上からタラップで搭乗なので、ガラス越しでなく生で写真が撮れるのも嬉しいところ。週末日曜日の東京行き最終便、タラップまでの道中警備員に急かされるまでミラーレス一眼でバシャバシャ写真を撮っている最中、手荷物にプリキュアの缶バッジなどを付けた明らかに「同じライブ帰り」と思しき見知らぬ同志も何組か散見され、機体後部のラッピングに気付くと皆一様に喜びの声をあげていた。

 

搭乗、離陸後は1機しかないこのJA827P機内販売限定のコラボグッズなどを買い、購入量に応じたノベルティのウエットティッシュや友達へのお土産用にと非売品A320ステッカーまで頂き、すっかり満足。22:10到着予定だったはずが40分以上の遅延で成田空港からの終電が際どいことなどどうでもよく、ただただ満足したナイトフライトを楽しんだ。

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成田空港に到着すると、ターミナル直付けのボーディングブリッジではなく沖留めのタラップ降機でバス移動。大遅延で終電が際どいため多くの乗客は我先にとバスに乗り込んでいたが、1本見送ってその間ひたすら至近距離からプリキュアジェットを撮影。勿論制限エリア内なので明後日の方向に走り出し〜などは論外だが、警備員に怒られない範囲・時間で集中して構図を決め、サッと連写してブレていないことを確認したらすぐにバスに飛び乗った。

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至近距離から見上げた構図で撮影できるのは、運良く搭乗できた人間だけの特権だろう。主翼裏のレジ番と垂直尾翼Peachロゴ、そしてラッピングが収まっている写真はとても気に入っている。

 

ターミナルバスが1タミの建物に着いたのが22時54分。成田空港駅を出て都内に向かう列車は23:00のスカイライナー、そして23:08のアクセス特急高砂行き最終を残すのみ。ターミナル内を小走りして特急券を課金しスカイライナーに乗れば最寄駅から帰れたのだが、最終のアクセス特急でも+6分歩くのが長くなるものの家から2番目に近い駅までは帰れるので、プリキュアジェットの余韻を楽しむかのようにゆったりと空港内を歩いて終電に乗車した。

何度かの乗り換えを経て帰宅したのは深夜1時すぎ。旅行鞄から洗濯物をかごに放り込み、シャワーを浴び歯を磨いてすぐに横になる。寝て起きた月曜日も代休で休みだ。充足した気持ちで程なく眠りに落ち、怒涛の4日間が幕を閉じた。

 

感想 総評

ライブレポートとは題したもののほぼ自分語りと楽曲レポートに終始して大脱線しているが、オタクなので紡がれるパッションを抑えられなかった結果である。勘弁してほしい。

 

狭めのオルスタ会場でのライブということで元気の良いオタクが多く、プリキュアライブとしては過去一番熱量が高かったと胸を張って言うことができる。商業的には採算が合うのかわからないが、この成功を機に、是非ともまたこのようなライブハウスでのオルスタイベントを開催してほしい。会場の雰囲気は「終始熱狂していた」と報じる。

熱狂そのままにこの2週間後、チケットを取っていなかったはずの東京公演にも行くことになってしまうのだが、今のところ東京公演は配信もあったのでレポート記事は割愛しようかと考えている。10月21日に行われたひろプリライブも、同様の理由で記事にまではする予定がない。

次に書くなら映画プリキュアオールスターズFの感想・考察だろうか。ただ、なんせ感情が巨大すぎて全て文字で起こすとこのような物量になってしまうため、私もしんどい。お読みいただいている貴方もきっと今しんどい。

 

総計28,000字に迫る乱文へとお付き合いいただいた読者の皆様、プリキュアファンの皆様、ありがとうございました。

20周年イヤーのラストスパート、まだまだ楽しんでまいりましょう。

 

かしこ