【ネタバレ大・イベントレポート】2023.10.6(金) 18:30〜 新宿バルト9 「映画プリキュアオールスターズF ”F”ナイト【応援上映&スタッフトーク】上映」スタッフトークレポート

 

2023.10.6(金) 18:30〜 @新宿バルト9 シアター9

登壇者:田中裕太(監督)、田中仁(脚本)、板岡錦(総作画監督・キャラクターデザイン)、村瀬亜季(企画)、田中昂(企画)

 

はじめに

唐突ながら、私は本作の裏話や製作陣の考えていたことなどは「後学のために遺しておかなければ」と思っている。

というのも「何年も後にまたプリキュアを見た時」にも思い出して欲しい根源的なテーマにアプローチしており、本作という金字塔が今後の「プリキュア」のチェックポイントとして、少なくとも私の中で機能し続けることは確定しているからである。本作の総てが衝撃的であり、観せたいものの構想から細かい演出、機微に渡るまでが上質であったが故に、おそらく私だけでなく、本作を鑑賞した多くのプリキュアファンは多かれ少なかれそう感じるはずだ。

本公演で語られた秘話を遺しておかないことは、私だけでなく多くのファンにとっての大きな損失となると決意し、速記で記録・記憶している限りの内容を書き出すこととした。

 

要所でとったメモを記憶と共に加筆し、面白かったところ・気になったところを起こしたものである以上、発言の言葉尻や語順などはかなり異なるであろうことは先んじて注記いたします。トークのニュアンス・エッセンスを伝えることが何より先決であり、メモの速度・記憶の限界もあるのでご容赦を。

途中文語と口語が入り混じっていたりするのも勘弁してください。

 

応援上映終了後

6脚の椅子がセッティングされ、真ん中にプーカのぬいぐるみが着座。

村瀬P・田中昂P・脚本田中仁さんが上手袖から登場。

その後東映作品の舞台挨拶といえばお馴染み、司会の寺迫麿さん(以下●黒丸)から「残るお二人は皆様と一緒に応援上映を観ていました」との旨の紹介があり、客席(上手前方)から田中裕太監督と板岡錦作画監督が登場。この2人は観客席から応援上映を一緒に鑑賞していた。

 

<勝手ながら以下敬称略>

 

席次

(下手)村瀬 板岡 プーカ 裕太 仁 昂(上手)

 

●改めて5人揃ったところでご挨拶

板岡「おじさんの集まりの舞台挨拶なんて見に来る皆さん、どうかしていますよ。本当にありがとうございます。」

田中昂P「3人目の田中です。色んなところで田中3人でやってますけど、この2人が偉大すぎるんで、僕は0.5くらいです。なので2.5田中くらいです。」

 

●(壇上の5人の)そのお召し物は…?

各人が映画プリキュアオールスターズFのスタッフジャンパーを着ている

髪がはためいて"F"の字に見えるキュアプーカのシルエットがメインロゴのジャンパー。プリント箇所は背中側と前側胸部。紫・青とカラバリがある様子。

 

板岡錦「一度『スタッフジャンパーを着て仕事をしたかった』と自腹を切って作った。キュアプーカだからネタバレになるんで普段は着れない!」(笑)

なんと板岡先生自費製作とのこと。

途中倒れそうになるプーカ人形を直す板岡と裕太

 

●村瀬P・田中Pへ「ズバリ"F"について伺えますか?」

村瀬 「今作に込めた想いとしては、全シリーズ好きでいて下さったあらゆる皆様に観ていただきたいという想いであれこれ詰め込んで作りました。プリキュアの持つ大切な要素は色々あるかと思うんで、"F"にその色々な要素をかけて作品をリリースしました。」「これはちょこちょこインタビューで言ってるのですが、"F"最終ティザー映像の"Final…?"という(意味深な)カットは、もし(このスタッフで作るのが)最後、Finalになったとしても、悔いのないようにやろう!という意味合いを込めて"Final…?"としました。」

 

田中P「この映画が持つメッセージとしては"Forever"永遠に続くというよりも、"終わらせない"つまり"Not Final"の意味の方が強くて…… 実は今作のロゴ、途中で改訂されて"プリキュアオールスターズ"という部分の後ろにリボンみたいなので"N"が入っています。実は"Not Final" "Never Final"の暗示。皆様気付きましたか?今日初解禁です。」

村瀬「この"N"の話、ほとんどの人が知らなくて、監督とPくらいにしか明かされていないです」

板岡「いや今初めて知った!」会場拍手

村瀬「なのでロゴ策定の段階からこの想いは固まっていました。」

 

<筆者注:隠れた"N"については本トークショー直後プレスより記事が出ています。/ "New Friends"・"New Futari"とかも掛かっていそうで、想像が膨らみますね>

news.yahoo.co.jp

 

●司会 田中裕太-田中仁のゴールデンタッグ、改めて2人で仕事をしてどんな想いでしたか?

監督「何度も仁さんとは一緒に仕事をしてるので、何の心配もせず、お願いします!という感じで…」

田中仁「僕も裕太さんだったら間違いないと思ってご一緒してました。」

板岡「なんかイチャイチャしてる」(笑)

監督「もう仁さんとタッグを組むのは4作目?自分がやりたいことをどんどん広げていただいて、70分に到底収まらないものを無理矢理入れ込んでもらって、流石だなぁ〜と」

 

仁・監督「オールスターズ78人出るの、最初は構想外で、2人とも無理だと思ってた」

監督「チロっと、途中からどうせ78人出るんだろうな?とはうっすら感じてたけど、こんなにしっかりみんな出るのは想定外。」「シナリオ途中まで考えてたんですが、急に映画デパプリの頃から村瀬Pのギアが上がった?『これじゃダメだ!』みたいな村瀬Pからの突然のダメ出しがあった」

村瀬「いやでも良かったですよね、皆さん(笑)」拍手

 

<筆者注 別媒体でも語られている前情報:本作は当初オールスターズにする想定ではなかったが、途中からあれよあれよと話が膨らんできて結局全員出すことになった。監督の中では当初Goプリ以降の近9作に焦点を当てた映画にする構想で用意をしていた>

 

●板岡錦が自ら作画監督志願した背景

板岡「メージュとかインタビュー載ってる雑誌読んでればどこでも載ってると思うんですが『監督好き好き〜♥』みたいな風に見えるでしょ(笑) でも観ていただいてわかるでしょ。この人についていけば間違いないと。」

<筆者付記:これは板岡先生の仰る通り、メージュでもメディアでもWEBインタビューでも出ている質問で、どれも一貫して同じ答えが書いてあります(笑) より具体的に知りたければ各媒体をどうぞ。>

 

●板岡さんの制作の日々を振り返ってください

「最初から〆切が決まってるから割り算で1日どれくらいやっていけばいいか、日割りで計算していた。映画、例年10月末なのに、今年のプリキュアは去年に続いて9月な上、更に1週間も早まった」「積まれた仕事をひたすらこなすだけでした」

「78人出すって、口で言うのは簡単だけど、現場はね…(笑)」

 

●監督へ「プリキュアって何?」というテーマに辿り着いたきっかけは?

「20年プリキュアやってきて、自分の中でも"プリキュア"がわからなくなってきた。男の子もアンドロイドもいるし…」

「で、プリキュアって何なんだろうと改めて思い返してみて、それがテーマなんじゃないかなぁ…とやってみた次第」

「新作のプリキュアを考えるとき、毎年"プリキュアって何?"って新規企画の人の間でいつも悩むと聞いていたので、それで…」

(新規企画担当)田中P・村瀬「それこそ深夜…いや、朝までやったり…」

 

●田中仁へ「全プリキュア、78人出すにあたり大切にしたこと」

田中仁「まず…絵を、78人描く大変さね」

板岡「大変です!!」(笑)

仁「78人1人1人の想いというか、最初にシリーズ構成を担当したGoプリをやる前、初めてオーディションとかにも参加して、キャストがどれだけその役に総てを懸けているかを知った。キャストにとってはその役が自分の全て。その一件以来なるべくその想いに応えるために各キャラを描こうと脚本しており、今も実践しているが、それが78人というと…」

監督「てか78人じゃなくてもっと出たよね(笑)」「そろそろ顔と名前が出てこないよね(笑)」

 

●もしまた観る時に「ここを観て!」というポイント

・田中P「シュプリームのプリキュアのロゴ」

監督「シュプリームが出てくるシーンの紹介字幕が入るシーン、右下に『(ほにゃらら)プリキュア』というシュプリーム専用のロゴが出るけど、あれの"プリキュア"の上、(キリル文字みたいな)読めない文字になってるとこ、結構こだわってリテイクも入れつつ発注してて、実はとある言葉の変形文字になっていて、よく目を凝らすと読めます。」

田中P「私は停止してよーく見ましたがわかりませんでした!」「ビデオ買って止めて見て!!」

 

・村瀬P「シュプリームの特徴的な足音」

監督「足音に特徴出したいんですよ〜と音効担当にお願いしたら『わかんねぇよ……(その音効さんのモノマネで)』みたいなことを言われた。だけど音入れの段階でいい音をつけてもらっていた。」「シュプリームの発する音は衣擦れの音などもすべてエフェクトがかかっている。」

田中P「序盤の上からシューっと降りてくるシーンの音がいい音!」

 

・板岡「なんで最後のシュプリームは黒いの?」

監督「元々シュプリームは異界から来た神様のモチーフで、(※) 完璧・超越イメージの、気高い白のイメージだった。ただ、神様のような、完璧な存在が、プリキュア=人間と触れて、感情などを知った、いわば"シミに染まった"ことを示すために、黒くなった。ラストシーンは一度生まれ変わってるイメージ。」

「ラストシーン、プーカとプリムが白と黒のふたりはプリキュアに見えるところは、最初から構想してたわけでなく、シュプリームを黒くしていったらたまたま初代のオマージュになったもの。当初より意図してたものではない。」

 

<※筆者注:日本神話に着想を得たのではないか?と考えていたため、神をイメージしていたと聞いて少し鼻が高い。国作りの神話とか?公開日にそのことをツイートしている。>

 

 

<筆者付記:プリムとプーカを一般的に「寂しがり屋」とされるうさぎのモチーフにしたのは、ラストシーン「あの時からもう変わり始めていた〜」のくだりに向けた伏線のために意味ありきで決めていたと思っていたが、そうではないらしい?と明かされている。

アニメージュ2023年10月号インタビュー掲載「なぜうさぎモチーフなのですか?」という質問に対し、監督より「映画オリキャラのデザインを考える上で、モチーフがあった方がいいよね、ということで出た色々な案の1つ。うさぎが身近で可愛いし、今年は卯年だしうさぎに決めた」旨が語られている。

メージュのインタビューはプーカの名前の由来なんかも載ってます。気になる人は是非買ってください。>

 

・田中仁「最後のとこが好きかなぁ。」

仁「(監督にシナリオを出すと)必ず+αを付加して返ってきて、こういう構想があるんだ、と嬉しい。」「娘とバルト9に本作を観に行ったら、娘がラストバトルでミラクルライトをブンブン振ってて、怒涛の映像に圧倒されてたら終わってしまった。」

監督「ハグプリ37話(オールスターズメモリーズに向けた全員集合回)で一度ああいったこと(全員バトル)はやったのだが、それと同じことをやった。大分人数は増えたので、78人の構成チャート?のようなものを用意して、出したプリキュアは"×"をして消していって(会場戸惑いと笑い)、最後に『78人、やっと入った…コンテ切れる…』みたいなことを考えてやりました。」

田中P「あのバトルシーンの組み合わせ、監督から『ネタない?』って訊かれました。」

監督「あんま返ってこなかったけど(笑)」

田中P「僕が送ったやつは没になりました(笑)」

 

●そろそろお時間が……

板岡「こっちはあと…5時間くらいは行けますけど(笑)」会場拍手

 

告知タイム 10/13金の応援上映決定

 

●最後の挨拶を

・田中P

「15周年の映画を超えられたんじゃないかな、いや、それに比肩するくらいかな、どちらも遜色なく面白いものに仕上がってると思います、ホッとしてます。」「周年イヤーということで、まだまだ後半戦も盛りだくさんです。オトナプリキュアも始まりますし、まだ声を大にしては言えないんですけど、2月の"アレ"(感謝祭?)も、やる予定です!」

「残り半年、一緒に盛り上がってくれますか〜?」「本日はありがとうございました!」

 

・村瀬P

「皆様からの声を頂いて感じることは、こちらとしても映画を作り切ったなとは感じているんですが、皆様の反響・力が本当に凄くて、皆様の声で映画を大きく成長させていただいているなと感じます。何回も何回も観てお楽しみいただけたらなと思います!」

 

・板岡

「色々考えてきたんだけど、なんかもう喋んなみたいな雰囲気で(笑)」

「プーカのぬいぐるみ制作秘話とか考えてきたんですが、みんなプーカ可愛いよね?」「ただプーカのグッズ全然なくて、売店に。みんなプーカのぬいぐるみとか出たら欲しい?」(会場「欲しい〜!」「シュプリームも!」「シュプリームのパーカー(これ私の発言です…)」)

板岡「シュプリームのパーカー(拾われる)」

「この声メーカーに届けばいいな、おもちゃメーカーとかアパレル会社とかの人、この中にいません?笑」

 

<筆者付記:プレミアムバンダイさん、本当にお願いします。>

 

・田中仁

「僕だけでなくスタッフのみんなの想いが映画となっています。これからも映画は続くので、何度も観てくれたら嬉しいです。」

 

・監督

「色々な評判を聞いていまして、映画を暖かく受け入れていただいてるなという印象があります。ありがとうございます。」「また、今回シナリオ上、あんなキャラだしプリキュアに勝ってるという、敵キャラのキュアシュプリームが意外と受け入れられているということが、個人的に嬉しかったなと。」

板岡の横槍「俺も良かった。」(会場笑い)

監督「プリキュア関わって長いんですけど、その決算になればいいなぁと。色んな人の力を借りて、仲間やお客様のおかげで、20周年を飾る映画としてほぼ成功と言える結果にできたのではないかな〜と思います。」

「上映はまだまだ続くので、また2回3回と、足をお運び頂けるといいなぁと思います。」

 

 

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筆者より おわりに

取り急ぎスタッフトーク、覚えてる限り出してます。このブログが皆様の"F"再鑑賞におけるスパイス、手助けとなれば幸いである。

書いた私がまた観に行きたくなっていて、映画館から帰って、考えてはまた疑問や感動が湧き上がり、もう一度観たくなって…を繰り返し、本作を10回は観てる上で、また行きたくなっている。

 

トークでは既にWEBインタビュー・アニメディアアニメージュ等で公開されている内容については前置きした上でサラッと流し、未公開の内容・今まで触れられていない内容に焦点を当てた質問・回答が多く、非常に創発的で示唆に富む時間であった。

来年発売されるであろう映画のブルーレイには、是非スタッフのディレクターズカットエディションとか、オーディオコメンタリーとか、製作秘話ノートとか、更に本作を深堀りできるコンテンツがついた豪華版なんかをリリースしていただけると嬉しいです。

「過去最高傑作」が、私の中の"プリキュア観"を刺激して止まない。

 

素晴らしい作品を世に送り出して下さった製作者の皆様、スタッフトーク上映を企画運営してくださった関係者の皆様、本当にありがとうございました。

 

本記事はレポートを書いた形だが、これとは別に映画を観た際単純に私の内面で起こったこと、つまり映画を観て感じたことや、特徴的な場面に対する私なりの観点なんかを詳細に語った記事も書きたいと思っている。ただ、なんせこの物量になりそうで時間がかかることは言うまでもない。

筆が遅いこと、お許しください。